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ニッカカフェモルト 旧式カフェ式連続式蒸溜機の味わいと香り

「ニッカカフェモルト(Nikka Coffey Malt Whisky)」はニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所が保有する伝統的な「カフェ式連続式蒸溜機」だけでつくられたモルト原酒を熟成させたモルトウイスキーです。

 

「ニッカカフェモルト」は2014年1月にヨーロッパで先行販売され、同年6月に日本で発売開始。「カフェグレーンとの違いは?」と疑問をもつ方もいますね。

 

カフェグレーンの原料は主にトウモロコシを原料としたものであり、カフェモルトの原料は大麦麦芽です。カフェグレーンに限らず、グレーンウイスキーはブレンデッドウイスキーを造るときにモルトウイスキーの風味を引き立ててくれるため、必要不可欠な存在です。

 

 

ニッカのカフェ式連続式蒸溜機は「宮城峡蒸溜所の第二の心臓」と呼ばれ、造られるグレーンウイスキーは同社のブレンデッドウイスキーの重要な役割を担っています。

 

ただし、今回紹介する「ニッカカフェモルト」はそのマシンを使ってグレーンウイスキーではなく、モルトウイスキーを造ったというのが特徴なんですね。

 

カフェ式連続式蒸溜機の仕組みはこちらで解説>>>「ニッカ伊達」

 

もちろん、醸造してもろみを作るまでは通常のモルトウイスキーと同じ工程ですが、蒸留だけをカフェ式で行っているため、それが風味の違いとなって現れています。

 

カフェモルトは世界でも希少です。その理由は原価の高い大麦麦芽を連続式蒸溜機で蒸溜するというコスト、さらにカフェ式でモルトを蒸溜する場合はグレーンよりも大麦麦芽の発酵液の泡立ちが多く、熟練の技が必要なんですね。

 

 

ここで、ニッカまでつながる「カフェ式連続式蒸溜機」の歴史を解説します。ウイスキーの発祥はアイルランドに始まると言われます。アイルランド国内では18世紀後半にウイスキー製造業が始まります。

 

当時は2000近くもの小規模な蒸留所があったとか。そのうち、「もっと大量のスピリッツを効率的に生産できるスチルを」というニーズが高まるなか、ウイスキー業界で産業革命が起きます。それが連続式蒸溜機の登場。

 

1826年にスコットランド人の蒸留業者ロバート・スタインが丸型タイプを開発。その5年後の1831年、アイルランドのイーニアス・コフィ(カフェ)がそれを改良。カフェ式連続式蒸溜機を完成して、1831年に実用化にこぎつけます。

 

コフィはアイルランドのダブリンで生まれ、有能な収税官として働いたのちに依願退職。ダブリンで小さな蒸留所の経営に乗り出した人物でした。

 

Pot still ジェムソンの単式蒸溜器
Pot still ジェムソンの単式蒸溜器

 

連続的に大量に安価に蒸留できる画期的なスチルは、彼の名にあやかって「コフィ・スティル」と呼ばれます。また、2塔からなる蒸溜機で特許(パテント)をとったため、パテントスチルとも呼ばれました。

 

ところが、このカフェ式新型蒸留機はアイルランド国内で評判が悪く、取り入れたのはウイスキー造りのライバルとして台頭しはじめたスコットランド・ローランドの業者でした。

 

1840年、パテント・スティルを使って穀類を原料にした新タイプのグレーンウイスキーが誕生。その13年後には、エディンバラの酒商人アンドリュー・アッシャーが、このグレーンウイスキーと従来のシングルモルト・ウイスキーを混ぜ合わせたブレンデッド・ウイスキーを開発します。

 

Patent still 現代的な連続式蒸溜機
Patent still 現代的な連続式蒸溜機

 

ブレンディッドウイスキーが大量生産されると、スコッチは一気に世界へ輸出されるようになりました。いっぽうで、アイリッシュウイスキーは第一次世界大戦頃から徐々にスコッチにシェアを奪われ、禁酒法への対応ができず、蒸留所の閉鎖が相次いで衰退の時代を迎えます。

 

とはいえ、近年ではウイスキーブームのなかで、ふたたびアイリッシュウイスキーの風味が見直されて人気となり、新しい蒸留所の建設ラッシュに沸いています。アイリッシュの完全復活に期待したいですね。

 

その後、さまざまな連続式蒸溜機が開発されて、現代では数塔を併立して使うところも出ています。旧式のカフェ式はいまや世界でも珍しい存在となっていますが、ニッカがあえてこだわっているのがこのタイプです。

 

Dublin アイルランド・ダブリンのパブ
Dublin アイルランド・ダブリンのパブ

 

旧式で蒸溜効率は劣りますが、蒸溜液に原料由来の香りや成分が残る特徴から、ニッカウヰスキー創業者、竹鶴政孝氏の時代からずっと愛され、使われ続けています。

 

「ニッカカフェモルト」は700ml・45度で価格は送料含めて5,500円前後。一般的な評価も高く、「甘くフルーティな香り」「濃厚で複雑な味」「まろやか」「ストレートがうまい」といったレビューが並びます。

 

もう少し安くなってくれるとうれしいですが、ほかの会社では真似のできないニッカのお家芸ボトル。世界遺産的に貴重なカフェ式連続式蒸溜機から生まれるモルトウイスキーとなると、価格が高くなってもやむなしといったところかもしれません。