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ハイランドパーク12年・蒸留所の個性派ピートや風味、新旧ボトル評価

ハイランドパーク12年・蒸留所の個性派ピートや風味、新旧ボトル評価

「ハイランドパーク12年ヴァイキングオナー」の魅力を紹介します。

 

蒸留所が一部フロアモルティングで造り出す、ヘザー風味のフローラルピートとはなにか、風味のテイスティングノートや価格、口コミ評価、新旧ボトル評価、テレビドラマ「マッサン」との関係について書いてみました。

 

ハイランドパーク12年はスコットランド・オークニー諸島メインランド島カークウォールにあるハイランドパーク蒸留所が造っているシングルモルトウイスキーです。

 

スコットランド北岸から西岸にかけて沖に点在する島々で造られるモルトは、アイランズモルトと呼ばれ、オークニー諸島に属するハイランドパークもアイランズに含まれます。

 

カークウォールの街の画像
kirkwall メインランド島カークウォール

 

ちなみに、「フェイマスグラウス」のキーモルトとしても知られていて、ハイランドパークがキーモルトになってからフェイマスグラウスの売り上げが伸びて人気のブレンデッドウイスキーとなったんですね。

ハイランドパーク12年シングルモルトウイスキー・風味のテイスティングノート

ハイランドパーク12年シングルモルトウイスキー(Highland Park 12 Years Old Viking Honour)の風味について、あくまでも私流の主観的なテイスティングノートとして紹介します。

 

開栓してみると、蜂蜜の甘い匂いが強く炭っぽいピート香が漂ってきます。

 

あとで紹介する一般的な口コミ評価では、スモーキーさが強い、弱いなど正反対の感想がよく出てきますが、これは個人的な感覚の違いだと思われます。

ピート香が弱いと表現するのは、おそらくアイラモルトに慣れた方であり、アイラモルトに親しんでいない、あるいは好みではないという方には強く感じると思われます。

 

ボトルは分厚くて重く、縦長の端正なボトルに慣れていると、ウイスキーが満タン状態だと持ちにくいでしょう。

 

さらに、瓶の口径が大きいので、ボトルを傾けると普通のボトルのように少しずつ注ぐつもりでも、ドバッと出てしまいますので要注意。

力強さとやわらかな甘さ、酸味。個性的なピートの風味

ネック部分をグラスにひっかけるようにして慎重に注ぎます。ストレートで味わってみると、最初に辛味がガツン。少しだけ塩辛い感じ、硬質感。

 

最初の口当たりだけは男性的で、ニッカで2015年に終売となったブレンデッドウイスキー「G&G」の味を思い出しました。

 

あとは蜂蜜の甘さと少しの酸味、ヨード系ではない独特の炭っぽいピート香の深みが口の中に広がります。蒸留所こだわりのヘザー主体の泥炭の特徴でしょうか。

 

メインランド島の海岸の画像
Stromness メインランド島ストロムネスの海岸

 

ピートで焚かれた大麦は全体の20%しか使われていない(後述)とはいえ、それなりに(詳しくは後述します)主張はあります。

 

スペイサイドモルトを髣髴とさせる甘さと酸味、そこに仕組まれたピート。甘味と酸味、辛味がバランスよく計算されたシングルモルトで、スペイサイドモルトやハイランドモルトが好きな人には入りやすいウイスキーですね。

おいしい飲み方はハイボールなら濃いめ、ロックやストレート

ハイランドパーク12年をハイボールにしてみると、スモーキーさが前に出てきて甘味と酸味の魅力が引っ込みがちになってきます。

 

また、飲み終わりに樽の渋み、えぐみのようなものが舌に残ります。シェリー樽の消毒に使う硫黄の成分と指摘する人もいるようですが、真実はいかに? 

 

ヴァイキングの力強さがボトルデザインに表現されていますが、いかつい面構えの印象は最初の口当たりだけで、あとはやわらかい印象ですね。

オークニー諸島なのでアイラモルトに近いイメージで購入した人にとっては物足りなく、拍子抜けかもしれませんが、飲みやすいことはたしかです。

 

ハイボールではクセもなく軽快に飲めるので、食中酒にも良いと思います。私もそうでしたが、つい、飲みすぎてしまうウイスキーです。

ハイランドパーク12年ヴァイキングオナーの定価と価格

ハイランドパーク12年ヴァイキングオナーはアルコール度数40度・700mlで、記事アップ日(2022年2月10日)の価格では、税込3,900円ほど。

 

定価の目安となる日本の販売元レミーコアントロージャパン社の希望小売価格は税別で4,200円なので、定価よりも安く購入できるスコッチです。

 

とはいえ、このボトルを初めて紹介した2020年1月15日には税込3,200円ほどで購入できたので要注意。価格推移としては、値上がりしつつある銘柄ですね。

ハイランドパーク12年ヴァイキングオナーのレビュー評価

次に新ボトルの評価から、まずはマイナス評価の感想をあげてみます。

 

ボウモア12年と比べれば、潮、甘味、旨みは感じられず、ひたすらにスッキリ、ドライを追求した1本」

タリスカーやボウモアを美味しく感じる方には、味も香りも薄くパンチも少ないので物足りないと思う」

「悪くないが、4000円出すなら他のブレンデッドでもこれ以上の満足感があるスコッチはある」

「柑橘類と蜂蜜のノートを持ち、ヘザーと他の強烈な香りもある。背景にはスモーキーさもあるが、少々バランスが取れすぎている(英国)」

 

ヴァイキングの画像

 

支持するレビューは以下の通りです。

 

「濃厚さがありながら、飲んでいてエグみが無いのが良い」

「トロッとした蜂蜜感と正露丸系ではなく、木を燻したような煙たさが癖になる」

「味は旧ボトルと同じく万能系。紫のヘザーの甘い香りがかすかに香り、タールやヨード臭はほとんどない飲みやすいお酒」

ノッカンドゥと似た感じで、香り良くフルーティー。スモーキーさはほとんど感じない」

「スモーキーさに甘やかさが溶け込んだ味わい。上品さを感じる」

「このウイスキーは、ジャケットに何週間も続く上質な香水のようなもの(英国)」

「わずかにスモーキーなノートのあるマイルドなモルト。丸みのある味わい。素敵な新しいボトルのデザインだけでも買う価値がある(ドイツ)」

 

強いスモーキーさ、クセのある味わいが好きな人には合わない傾向がありますが、フルーティ強めの味が好きな人からは高評価です。

新旧ボトル(終売)の比較、一般評価は?

ハイランドパーク12年ヴァイキングオナーはもともと「ハイランドパーク12年」として販売されていたものです。

 

それが2017年9月で終売となり、アルコール度数、容量、価格、中身ともに変更のないまま、名称とボトルデザインがリニューアルして新ボトルになったんですね。

 

今回の「ヴァイキングオナー」はヴァイキング文化、スピリットへの敬意がボトルデザインに表わされています。

 

ヴァイキングの船の画像

 

新ボトルと旧ボトルを比較した人の感想です。感じ方に個人差はありますが、気になる方は在庫切れの前にチェックしてみてくださいね。

 

「旧ボトルの方が色合いがわずかに濃くてコクがある」

「新ボトルはシェリー酒の樽の香りが薄くなった。味は変わっていないがスモーキーさが若干強まっている気がする」

「新ボトルは旧ボトルより若干スモーキーさがなくなったが、フルーティーな甘さと香りが引き立っている」

「旧ボトルは滑らかな泥炭から滴り落ちる蜂蜜とヘザーで5つ星の御馳走だった。しかし、新ボトルは本質を全体的に失っている。残念だ。(英国)」

「ブランド名の変更で違いがあると主張する人もいるかもしれない。それらの専門家は私よりもはるかに洗練された味覚を持っているか、あるいは単に変化を恐れているのかも。決定はあなたにお任せする(英国)」

風味の特徴を決める蒸溜所のフロアモルティングとヘザーピート

ハイランドパーク蒸溜所のこだわりのひとつが、最近では少なくなったフロアモルティングが部分的に行われていること。

 

蒸溜所から約10km離れたホビスタームーアで手掘りされるピートは、アイラとは異なる種類なんですね。

 

寒冷地で強風が吹き荒れる土地柄のため、高い木が育たず、低木のヘザーなどが主に堆積してできたピート。

 

3つの異なる層から手作業で切り出されたピートを自前のモルティングを施す過程で炊き込み、アイラモルトとは異なったフローラルなスモーキーさを出しています。

 

ただし、それは使用される大麦の20%だけ。残り80%の大麦はノンピートでブリテン島本土から輸送されてきます。こうしてピート香のバランスが調整されています。

 

さらに、夏でも15度、冬でも零下にはならない環境での低温熟成。スパニッシュオークとアメリカンオークのシェリーカスク(樽)の使用。

 

また、個々の原酒を合わせたのち、再び樽に戻しておこなう「カスクハーモナイゼーション」と呼ばれる調和期間により、スモーキー&ハニーと言われる品質が生まれます。

ハイランドパークの種類

ハイランドパークの種類は「18年」「25年」「40年」「ダーク・オリジンズ」のほか、限定商品として「ヴァルキリー」「ザ・ダーク17年」「アイス・エディション」「ファイア・エディション」「ヴァルハラ・シリーズ(ソー・ロキ・フレイヤ・オーディン)」「50年」と豊富です。

 

「ダーク・オリジンズ」は先ほどの密造業者マグナス・ユウソンの活躍にインスパイアされて作られたスコッチウイスキー。

ハイランドパーク蒸留所とマッサン

NHKのドラマ「マッサン」の主人公、亀山政春が理想のウイスキーづくりの模範とするのが、架空のウイスキー「ハイランドケルト」ですが、一般的にはハイランドパークがモデルではないかと言われています。

 

つまり、ドラマのモデルとなった竹鶴政孝氏がお手本としたウイスキーはハイランドパークではないかということですね。

 

ニッカにもさまざまな銘柄がありますから、なかでも余市蒸留所のシングルモルトと同じ傾向の味なのではないかということですね。

 

たしかに同じ傾向の路線にあると思いますね。先ほど私もひと口飲んだときにブレンデッドウイスキー「G&G」の味を思い出たと書きましたが、G&Gは余市蒸留所のモルトとカフェグレーンが使われていました。

 

いずれにしても、ルーツを辿るにはその時代のそれぞれの旧ボトルを入手する必要があります。

ハイランドパーク蒸留所・お酒に流れる悠久の歴史

ハイランドパーク蒸留所はザ・ハイランド・ディスティラリーズ社(レミー コアントロー社傘下)による1798年創業の老舗です。

 

スコットランド最北端という厳しい環境下にある蒸留所として知られ、中世風のテーマパークのような蒸溜所は人気の高い観光スポットです。

 

伝統を守り、通好みでグレードの高いモルトを造ることから「北の巨人」と称されるハイランドパーク蒸留所。

 

同蒸留所が造るシングルモルトの特徴には、立地するオークニー諸島の風土や文化が大きく反映されていますが、12年ヴァイキングオナーもそのイメージを前面に出したデザインとなっています。

 

オークニー諸島は中世には長らくノルウェーの領地だった場所。そのため、スコットランドでもヴァイキング文化の影響が色濃く残ります。

 

新石器時代の墓石、巨石群、鉄器時代の円塔、大聖堂、廃墟と化した宮殿など、悠久の歴史が眠る土地です。

 

この地でヴァイキングは献身、技術、栄誉、高潔、地域、誇りを伝統として生きました。

 

時速40マイル(64.37キロ)以上の強風が吹く日は年に80日以上。野外で仕事する人が多く、厳しい気候にも慣れるうちにタフな気質がつくられていくのだとか。

 

蒸留所の建つ場所は「闇のヒーロー」として語り継がれる、禁酒法時代の密造業者マグナス・ユウソンの密造所があったと言われます。