· 

「エギュベルジン」リキュール製造で名高い修道院のレシピ

「エギュベルジン(Eyguebele Gin)」は南フランスのプロヴァンス地方にあるトラピスト派エギュベル修道院で造られているジンです。

 

修道院がジンづくりをするのを日本に置き換えると、お寺で焼酎を造るような違和感があるかもしれませんが、ヨーロッパではとくに珍しいことではありません。

 

宗派によってちがいますが、多くの修道院では飲酒は禁止されておらず、厳しい修行の活力剤として盛んに作られていました。

 

La Provence プロヴァンス
La Provence プロヴァンス

 

健康維持のためにつくられたのが薬用酒づくりです。エギュベル修道院のリキュール造りは、1239年ベネディクトゥス・デ・ヌライエ修道士のエリクシール・ド・ヴィを基本として18世紀半ばにジャン神父がレシピを作り上げたのに始まります。

 

同修道院はエギュベル蒸留所として、少量ながら多くの植物からなるリキュールを作りはじめます。

 

1930年代になり、ビルヌーブ・ド・ベールに拠点を置くアルディシュの蒸留所であるドルーズ社に買収されて、新たな転機を迎えることに。

植物系の強いアペリティフ(食前酒)の製造をしていたドルーズ蒸留所から、植物の組み合わせや砂糖を使ったリキュールの製造法をマスターして、さらに発展していきました。

 

1950年代からは「フルーツとハーブのスペシャリスト」として果実や植物をベースとするシロップを多く作り出していくようになります。

 

ちなみに、エギュベル蒸留所やジンの名前の綴りは「EYGUEBELL」となっていますが、もともとは「AIGUEBELLE」。年代物のエギュベルのボトルは「Aiguebelle」ラベルとなっています。

 

 

Aiguebelleとは「美しい水」という意味から名づけられた土地名であると同時に、エギュベル修道院の守護天使の名前でもあります。

 

この綴りを変えなければならなくなったのは、理由がありました。1980年代後半、ある企業からのリキュール大量発注に応えるために輸送設備への投資などを行ったものの、発注元企業が倒産。

 

売掛金の不渡り、設備投資金も回収できず、エギュベル蒸留所も倒産してしまいます。しかし、エギュベル修道院の酒類製造技術を評価した企業の傘下に入ることができて、レシピは引き継がれました。

 

現在でも同じレシピ、同じノウハウにより、シロップやリキュールは製造されています。

 

このとき、聖人の名前であるエギュベルのオリジナルスペルの「Aiguebelle」は使用できなくなり、Aigueと同じ意味のプロヴァンス語「Eygue」に変わって、現在のEyguebelleとなりました。

 

「エギュベルジン(Eyguebele Gin)」はアルコールの刺激が少ない、マイルドなジンでジュニパーベリーの香味が強く、甘い香りが残ります。お酒で得た利益はトラピスト派の慈善事業のために使われているそうです。