カネマラはまだ定価よりも安い相場価格で購入できる
「カネマラ(Connemara)40度・700ml」はアイルランドのラウス州クーリー半島にあるクーリー蒸溜所が造っているシングルモルトウイスキーです。
現代のアイリッシュウイスキーでは珍しいピーテッドのシングルモルトとして話題になっています。今回紹介するノンエイジタイプの「カネマラシングルモルト」はノンエイジで、バーボン樽で熟成された4年、6年、8年の原酒がブレンドされたもの。
カネマラシングルモルトはアルコール度数40度・700mlで、定価の目安となるビーム・サントリー社のオンラインショップ価格で4,536円(税込)。これにたいして通販の最安値価格では3,000円(税込)ほどで購入できます。

テイスティングレビューと風味の評価
一般的な評価では「ラフロイグやアードベッグほどキツくもなく、ボウモアよりもスモーキーな印象」「心地よいピート香が特徴。落ち着きのある余韻が好き」「淡いピート臭。ほのかに残る甘い香り」とバランスの良さを高く評価するレビューが多いですね。
スモーキーさの味わいに関しては好みの個人差が出てしまうものの、ピート香り以外は控えめな風味で軽い口当たり。スコッチよりもクセがないので、飲みやすいと思います。
クーリー蒸溜所の歴史と製造工程の特徴
クーリー蒸溜所は現在、ビーム・サントリー社の傘下にあり、サントリーがスポンサーとなっているテレビ番組でも紹介されて注目されたんですね。
同蒸溜所では今回紹介する「カネマラ」のほかにシングルモルト「ターコネル」、ブレンデッド「キルベガン」とともに、シングルグレーンなどを造っています。
クーリー蒸溜所のあるところは、もともとスピリッツやアルコール燃料を製造する国営工場。正確にはジャガイモの蒸留工場で、蒸留液が蒸留酒、消毒液、燃料などに使われていました。
1987年にこの工場を買収したのが、創業者のジョン・ティーリング氏。アメリカ・ハーバード大学で祖国アイリッシュウイスキーの歴史研究を経て、アイリッシュブランドの再興をめざします。
ポットスチルを設置して、1989年からウイスキー製造を開始。新しい蒸溜所ではのちに「アイリッシュの革命児」と呼ばれるさまざまな新しい試みが次々と製造工程に活かされてきました。
たとえば、一般にアイリッシュウイスキーは未発芽の大麦と麦芽の両方を原料に使用、3回蒸溜をおこないます。しかし、今回紹介する「カネマラ」は未発芽大麦を使用しないため、麦芽100%。
麦芽100%ではどのような風味が生まれるのかといえば、一般的にはアイリッシュにありがちなオイリーさがなくなり、非常にウェットでスムースになると言われています。

アイリッシュウイスキーではかつてピートを焚いていた
そのあとで、ピート(泥炭)を焚いて麦芽乾燥の工程をとります。現代のアイリッシュウイスキーでは珍しいピーテッド・シングルモルトですが、アイリッシュウイスキーの歴史をたどると、もともとピートを焚く製法だったんですね。
ブランド名となっている「カネマラ」とは「コネマラ」とも訳されます。「アイルランド西部ゴールウェイの北西にあるコネマラ国立公園として知られる地。入り組んだ海岸線や湖に囲まれていて、かつてはピートの採掘場所で有名でした。
それが、19世紀にアイルランドのウイスキー産業が盛んになると、ピートを燃料とした小規模生産から、石炭や木材を燃料とする大規模生産にシフトしたため、ピートを焚かなくなってしまいました。
「カネマラ」は原点にもどった製法と、当時への懐古を込めて名付けられているんですね。ここではモルトウィスキーとグレーンウィスキーの両方が製造されていますが、その製造法でも従来とはちがった取り組みが行われています。

2回蒸留とスコッチ方式のグレーンを使用
たとえば、伝統的なアイリッシュウィスキーとして有名な「ジェムソン」を造るミドルトン蒸留所では、原酒の滑らかさを倍増させるという理由から、モルトウィスキーの3回蒸留を伝統としています。
しかし、クーリー蒸溜所では3回蒸留すると香りが失われるという考えから初溜、再溜の2回蒸留。また、グレーンウィスキーの製造法は一般的なアイルランド方式ではなく、スコッチ方式。
これは、アイルランドでは通常グレーンウィスキーは「モルトウィスキーとブレンドしたもの」がグレーンウィスキーとなります。それがクーリー蒸溜所ではスコッチと同じく、グレーンウィスキーのみで造っています。
そのため、アイリッシュの個性が少なくて、スコッチでもないという微妙な風味が生まれるんですね。
アイラモルトのクセとはちがうピートのアロマを感じながらも、飲んでみるとやっぱりこれはアイリッシュという印象を楽しめるボトルです。