「ブナハーブン12年(Bunnahabhain)」はスコットランドのアイラ島北東部にあるブナハーブン蒸留所が造っているシングルモルトウイスキーです。
「ブナハーブン」とはゲール語で「河口」を意味していて、その名の通り、蒸留所はマーガデイル川の河口にあり、上流から水を引いて使っています。
建物はアイラ海峡に面して建てられていますが、海岸沿いに道路はなく、島の中心地からは幹線道路のA846号から路地に入り、細い農道を5キロメートルほど北上したところにあります。
![Bunnahabhain Distillery ブナハーブン蒸溜所](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/none/path/scdc847a1e0eae9fc/image/ic47a02e48d7c6d17/version/1534849414/bunnahabhain-distillery-%E3%83%96%E3%83%8A%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%B3%E8%92%B8%E6%BA%9C%E6%89%80.jpg)
アイラモルトと言えば「ピーティでスモーキー」というのが一般的なイメージですが、ブナハーブン蒸留所の特徴はピートをほとんど炊かない製法でつくられたシングルモルトウイスキー。
また、よりウイスキー原酒本来の味を追求するため、2010年にすべてのコア商品をアルコール度数46.3度、ノンチルフィルター(無濾過)、無着色に変更しています。
同蒸留所の特徴を紹介された記事を見ると、フレッシュな風味とともに「ノンピート」や「ピートひかえめ」と紹介があります。どっちなの?と感じるかもしれませんが、正確にはわずかにピートで焚かれています。
といっても、ピートレベルは2ppm以下なので、これはノンピートといっても問題のないくらい少ない数値。だから、両方の記述があるんですね。
ピートレベルの比較と解説はこちら>>>「アードベッグ10年」
とはいえ、ブナハーブンはもともとヘビーピートだったそうです。蒸留所の創業は1881年ですが、当時はブレンデッド用のヘビーピートの原酒だけを蒸溜していたんですね。
その後、世界的なウイスキーの需要を受けてブナハーブン蒸溜所も1963年にポットスティルを増設。このときを機に、ブレンデッド用の原酒づくりに合わせるためにモルトをノンピートに変更しています。
![Peat ピート](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/none/path/scdc847a1e0eae9fc/image/i1f969c1280885b78/version/1534909903/peat-%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%88.jpg)
その流れから、1979年になって蒸溜所初のシングルモルト「ブナハーブン12年」が発売され、アイラモルトでは珍しい「優しい味のアイラ」が知られていくことになるわけです。
ちなみに、現在のブナハーブン蒸留所ではノンピートのモルトだけでなく、ピーティーなモルト(銘柄ではヘビーピートの「トチェック」「モアン」)の両方の方針で運営されているので、昔ながらのブナハーブンも楽しめます。
「ブナハーブン12年」のラベルには故郷を目指す船乗り(水夫)のイラストがあります。また、旧ボトルには船乗りの下に「Westering Home」というスコットランド民謡の歌詞が書かれています。
![Hebrides ヘブリディーズ諸島](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/none/path/scdc847a1e0eae9fc/image/ia3cb9e3ecb06bd7a/version/1534909694/hebrides-%E3%83%98%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%82%BA%E8%AB%B8%E5%B3%B6.jpg)
これは遠洋航海に出たスコットランドの船乗りが、アイラ島、ジュラ島(ヘブリディーズ諸島のひとつ)の島影を目印に帰ってきたという内容の歌なんですね。郷愁が誘われます。
「ブナハーブン12年」の価格は最安値で4,100円くらい。12年のシングルモルトとしてはちょっと割高ですが、アルコール度数46.3度なので長持ちします。
一般的な評価は「やさしいコク・奥深い味わい・かすかに潮味が効いてスイート」と高評価。クセのあるヨード香やピーティーさがないアイラモルトなので、初心者の方でも親しみやすい逸品です。