オーヘントッシャン12年・終売後の風味評価や蒸留所の特徴
オーヘントッシャン12年はスコットランド・グラスゴーのダルミュア地区、クライド川のほとりに建つオーヘントッシャン蒸溜所(ビームサントリー傘下)が造っているシングルモルトウイスキーです。
同銘柄では2018年の秋に流通していたボトルをもって、10年とスリーウッドが残念ながら終売となりましたが、スリーウッドはわずかながら通販に在庫があるようです。
オーヘントッシャン(Auchentoshan)とは「野原の片隅(the corner of the field)」を意味するゲール語「achadh an t-oisein」が語源です。
まさにその名の通り、強いインパクトはありませんが、穏やかで繊細な味わいが特徴なんですね。
その風味を生み出しているのは、ローランドモルトの伝統製法である3回蒸溜。
さらに、オーヘントッシャン12年はバーボン樽とシェリー樽で熟成した原酒をバッティングすることで、果実感と甘みを繊細に生み出しています。
アイリッシュウイスキーも3回蒸留で知られますが、同じすっきり感でも違った旨味が感じられます。
オーヘントッシャン12年の定価・実売価格
オーヘントッシャン12年はアルコール度数40度・700ml。参考までに記事アップ日時点での通販価格は最安値で税込3,200円ほど。
定価の目安となるサントリーの希望小売価格は4,000円。
2018年に初めて紹介したときの市場価格は3,500円ほどだったので、価格推移はなく安定して購入できる安心銘柄となっています。
オーヘントッシャン12年の風味に関するレビュー評価
オーヘントッシャン12年の一般的な評価から、まずはマイナス評価を指摘する感想をあげてみます。
「奥行きの薄い感じなので、分析して楽しみたい人には少し物足りないかも」
「飲みやすいが物足りない」
「口当たりは薄く、舌の上でわずかに熱く、甘さは少なく、余韻の長いナッツのような味わいはない(英国)」
「スリーウッドのほうがよりフルーティなので好み(英国)」
支持するレビューは以下の通りです。
「軽いウィスキー、初心者向けと思われているかもしれない。若い時ほど元気でないし、無用な刺激はいらない。年齢を重ねた酒好きが最後に辿り着くウィスキーのひとつ」
「後味が辛い感じで、喉にきゅっと来る。それが安物の酒のようでは無く、心地よい」
「素晴らしく滑らかでおいしい」
「ハイボールでもトワイスアップでもクセがなく美味しいので、どんな料理にも合う。上品な香り、味」
「オーヘントッシャンは甘い味のために『グラスゴーの朝食ウイスキー』と呼ばれている。価格からも不平は言えない(英国)」
個性を感じないという印象を持つ人もいますが、オーヘントッシャンはローランド地域の特徴である「軽やかでライトな味わい」の代表格と言われます。
スモーキーさも軽く、軽やかで都会的な味わいと称されるため、女性にも優しい口当たりです。
オーヘントッシャン蒸留所・木桶発酵槽と伝統の3回蒸溜
オーヘントッシャン蒸留所ではピート香の軽い麦芽を厳選し、昔ながらの木桶発酵槽を使っています。
発酵は酵母や乳酸菌の力を借りて、アルコールやさまざまな香味成分を含んだ発酵液をつくり出す工程です。
木桶は保温性に優れているので、発酵の段階で酵母が働きやすい温度を保つのに役立つんですね。
また、木桶を使うと乳酸菌が棲みつき、さまざまな香味が現わる効果があります。
これまでに何度か触れてきましたが、もうひとつの特徴が3回蒸溜です。
キャンベルタウンにあるスプリングバンク蒸溜所の2回半蒸留、アイラ島にあるブルイックラディ蒸溜所の4回蒸留「X4」などもありますが、一般的なスコッチモルトは基本的に2回蒸留で造られます。
ローランド地方の3回蒸留は税金対策のためとか、精製されるアルコールをすべて使いきるためとか、ハイランドモルトと差別化をはかるために行われるようになったなどの説があります。
度数が高く、蒸溜過程で雑味が削られるため、ライトで軽快な味わいになるわけですね。
通常はウォッシュスチル(初留釜)・スピリットスチル(再留釜)という2つのスチルだけですが、3回蒸留ではこの間に、インターメディエイトスチル(後留釜)を設置します。
アルコール度数7~8%のウォッシュは初溜で19~20%、中溜で54~56%、最後の後留釜を出たときには81%まで精製されます。
また、再留や後留で抽出された蒸留液の一部は、次回の再留・後留の際に混ぜ合わされて、再び蒸留される仕組みにもなっています。
蒸溜後のスピリッツは水を加えて63.5%に下げた後、バーボン、シェリー、ポートなどの樽に詰めて熟成されるんですね。
オーヘントッシャンのウイスキーは、愛飲者から「オーキー」という愛称で呼ばれているそうです。