Compound Gin コンパウンド・ジン 別名バスタブ・ジン

 

「Compound Gin コンパウンド・ジン」は、ほかで解説したGin ジンと根本的に製造方法がちがいます。

 

ボタニカルの蒸留酒であるGin ジンのレシピは各銘柄によってちがいがありますが、定義上「ジュニパーベリーの香りがついたたお酒」でなければいけません。

 

抽出方法はDRY GIN ドライ・ジンの記事でも解説しましたが、蒸留の際にボタニカルが入ったバスケットに蒸気を通して風味づけする「バスケット法」と、ボタニカルをスピリッツに直接漬け込んでから蒸留する「浸漬法」がほかのGin ジンに使われています。

 

 

さらに、もうひとつの方法があります。蒸留はせず、グレーンスピリッツにジュニパーをはじめとしたボタニカルそのものを漬け込み、糖分などを加えるという製造法です。それがCompound Gin コンパウンド・ジンです。

 

以前はバスタブを利用して漬け込まれていたため、家庭で簡易に作れる「Bathtub Gin バスタブ・ジン」と呼ばれることが多かった合成酒的なジンです。現代でもDIY Home brewed gin(自家製醸造ジン)と呼ばれ、家庭で飲むためにつくる人もいます。

 

コンパウンド・ジンは醸造用アルコールを購入して漬け込み、ろ過するだけで蒸留することなく安価で大量のジンを作れるので、19世紀の密造時代に広く流通しました。

 

アメリカでは1851年から禁酒法が施行されると、酒類の密輸・密売に加えて粗悪な密造酒が横行。法律施行後数年でニューヨークだけでも酒場は数万軒に達し、警官の手入れが入れば店をたたみ、代わりに数件の店が近くで生まれるという状況になりました。

 

 

このときに製造・密売されたのがバスタブ・ジンです。風呂桶に水を張って手製の蒸留器を沈め、名ばかりの蒸留だけはおこなわれたので、正確には伝統的なコンパウンド・ジンの定義には入らないようですね。

 

原料にはヘアリキッドやメチルアルコールなどが使われることもあり、粗悪なお酒によって健康被害が出たり、命を落とす人まで現れました。

 

このとき、当時の人々は味の悪さをなんとかしようと、果汁を加えたり、味を調えたりと工夫を凝らしたさまざまな混ぜ物を試しました。その結果がカクテルの発展につながり、なかでもジンベースのカクテル「オレンジ・ブロッサム」の誕生もこのことが関係していると言われています。

 

とはいえ、現代では衛生的な管理のもと、あえてこの方法にこだわり、高品質なお酒をつくっているメーカーもあります。懐かしいバスタブ・ジンの名称で高い評価を受けているコンパウンド・ジンを次の記事でいくつかご紹介しましょう。