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ジュニパー・ベリーの薬効や精油の効能

 

現代ではジュニパー・ベリー(Juniper berry)は蒸留酒ジンのほかに、香りと抗酸化成分から調理用のスパイス、エッセンシャルオイル(精油)などさまざまな用途で私たちの生活に溶け込んでいます。

 

エッセンシャルオイル(精油)の効能には、リフレッシュ作用やデトックス作用(尿・発汗・解毒・老廃物などの排出促進)があり、むくみや冷え性の改善にも適しています。

 

1660年、ライデン大学医学教授のフランシスクス・シルヴィウス博士が、ジュニパー・ベリーを原料とした薬用酒としてジンを研究、開発して広まったことはよく知られています。

 

 

ジュニパー(Juniperus)の語源はケルト語で「渋い」を意味するjuniprusという単語で、古くから薬や香料として使われていたジュニパーの実に関連があると言われています。

 

鋭くとがっている葉がねずみを刺して侵入を防いでくれることから、日本では「西洋杜松(セイヨウネズ)」のほかに「ねずみさし」という名前でも知られます。

 

ジュニパー・ベリーの薬効は古代エジプトから認められていました。実は消化剤や虫下しに使われていたほか、アロマセラピーの原点とも言われる薫香「キフィ」にも、ほかの天然香料と混ぜ合わせて使われていました。

 

紀元前1550年頃に書かれたエジプト医学パピルス「エーベルス・パピルス(Ebers Papyrus)」にも紹介されています。キフィとは「聖なる煙」という意味。エジプトで「香りは神に近づく」という意味があり、大量の香料が消費されていました。

 

心を落ち着かせる、悩みをやわらげる、寝付きを良くする、悪魔が寝室に入らないようにするという目的で、 ファラオや高僧、身分の高い人のみに愛用されます。神官付きの薬剤師のみが作ることを許されていました。

 

 

また、古代ギリシャのヒポクラテスはジュニパー・ベリーがペスト菌に有効であると考え、ガイウス・プリニウス・セクンドゥス(古代ローマの博物学者で政治家、軍人)やガレノス(ローマ帝国時代のギリシアの医学者)は肝臓や体液の浄化作用があると考えていました。

 

そのため、古代ギリシアでは葬儀の際の悪霊除けとして焚かれたり、伝染病予防や動物に咬まれた時の消毒薬として用いられていました。

 

11世紀頃にはイタリアの修道士がジュニパー・ベリーを主体にしたスピリッツを製造しています。シルヴィウス博士がその情報をもとに蒸留酒ジンを完成させたのではないか、という説もあります。

 

ちなみに、先ほどのエーベルス・パピルスでは「タマネギ半分とビールの泡は死に対する治療薬」と記載されているのだとか。これらはあくまでも伝承としてのお話なので、代替治療として個人の判断で使うのは危険ですから、くれぐれもご注意くださいね。