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キルケラン12年 キャンベルタウンに復活したグレンガイル蒸留所

キルケラン12年 グレンガイル蒸留所の名がつかない理由

「キルケラン12年(Kilkerran 12 yeas old)」スコットランドの西南、キンタイヤ半島の先端近くにある街、キャンベルタウンに2004年にオープンしたミッチェルズ・グレンガイル蒸溜所が造っているシングルモルトウイスキーです。

 

オリジナルのシングルモルトウイスキーなのに、蒸留所名がついていません。その理由は同じくキャンベルタウンに位置するグレンスコシア蒸留所によって「グレンガイル」の名前が商標登録がされているからなんですね。

 

競走馬グレンガイルからたどりついた方、ごめんなさい。ウイスキーの話です。でも、勝利の記念のお酒にはいい記念になるかもしれませんので、よかったらお立ち寄りください。

 

グレンガイル蒸留所
グレンガイル蒸留所
photo credit: sebastian.b. Glengyle Distillery via photopin (license)

スプリングバンクによってキャンベルタウンに復活

グレンガイル蒸留所はもともと歴史ある蒸留所でした。創業は1872年、ミッチェル・ウィリアム氏が羊のことで兄弟ともめ、袂を分かって自分の蒸留所を建てたのが始まりだそうです。兄弟ゲンカがきっかけというのもおもしろいですね。

 

しかし、1925年に閉鎖され、残っていた樽のストックはすべてオークションで売られてしまいました。それを復活させたのが、スプリングバンク蒸留所のオーナー、J&A・ミッチェル社のヘドラー・ライト氏。

 

彼が2000年にスプリングバンク蒸留所に隣接していたグレンガイル蒸留所の建物を購入。幸いにも建物だけは比較的良い状態で残っていたため、修復されます。

キルケラン12年の特徴は、名蒸留所の中古スチル・設備

設備には由緒ある中古品が導入されます。スチルはグレーン・ウイスキーの蒸溜所だったインヴァーゴードン蒸溜所(ホワイト&マッカイ社)にあったベン・ウィヴィス蒸留所の小さなスチル2基が使われることに。

 

ベン・ウィヴィス蒸留所はハイランドにあり、「幻のモルト」と呼ばれる名高い銘酒を造っていましたが、1926年に閉鎖。今は駅近くにある貯蔵庫が残っていてオフィスなどに使われています。

 

このスチルですが、記事冒頭の画像を確認していただくと、奥にある2基がそれです。上のほうに継ぎ目のような痕があるのがわかるでしょうか。

 

これはグレンガイル蒸留所に運ばれて設置する際、ネック上部を継ぎ足して少し細長くしているのだとか。正確にはベン・ウィヴィス蒸留所時代とは微妙に違う風味となっているはずですね。

 

Kintyre キンタイヤの海岸
Kintyre キンタイヤの海岸

麦芽・仕込み水がスプリングバンクと同じでも、風味に違い

麦芽粉砕機(モルトミル)もクレイゲラキ蒸留所(クライゲラヒ)が使っていた中古のもの。クレイゲラキ蒸留所はホワイトホースのキーモルトとしても知られる、スペイサイドで現役で活躍する蒸留所(バカルディ社)です。

 

麦芽はすべてスプリングバンクでフロアモルティングしたライトピート麦芽(フェノール値約15ppm)を使い、仕込み水もまったく同じものですが、スプリングバンクが2回半蒸留にたいして、グレンガイルでは通常の2回蒸留をしています。

 

先に述べたようにスチルもモルトミルも違いますから、スプリングバンクとは違った味わいとなっています。

 

年に1ヶ月、わずか3万リットルの限定生産

ミッチェルズ・グレンガイル蒸溜所は2004年に復活後、初のスピリットが蒸留され、これまで進行中、未完成品という意味の「ワーク イン プログレス(Work in Progress)」というコンセプトで進んできました。

 

2009年にはキルケランと名付けた5年物のボトルを初リリース。現在はさらに熟成期間を経たキルケラン12年がリリースされているという流れになっています。

 

しかし、ちょっと残念なのはキルケランの生産量がわずか3万リットルと少ないこと。年に1ヶ月ほどスプリングバンクの職人により蒸溜されています。

 

キルケラン12年の熟成には創業年の2004年のバーボン樽70%とシェリー樽30%が使われ、キャンベルタウン特有の海風を伴ったピート香に、複雑なフルーティさが特徴となっています。

 

テイスティングレビューと価格、キルケランの意味

キルケラン12年はアルコール度数46度・700mlで、今日現在の相場価格は6,000円(税込)前後、運が良ければ5,000円くらいのボトルも見つかります。

 

一般的なテイスティングレビューの評価は「スプリングバングより良い意味で薫りにクセがあり大変好み」「潮っぽさのあるスモーキーな香りとフルーティさが絶妙なバランス」など、キャンベルタウンモルトファンならではの感想が見られます。

 

スプリングバンク監修のもとで造られた、入手しずらいキャンベルタウンらしいボトル。やや高値でも飲みたいという方向けです。

 

ちなみに、「キルケラン(Kilkerran)」の由来は、地元の聖人ケランからきています。ケランの小さな修道院のある、湖の奥まったところを意味する地名だそうです。